ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州南端は、医療技術業界のメッカです。ボーデン湖から北西に約40 kmののどかな地域に、トゥットリンゲンは位置しています。シュヴァーベン地方の郡庁所在都市であり、人口35,000人の同市は、医療技術業界の世界的な中心地でもあります。ここでは、約600社が手術器具や医療技術製品を製造しています。そして駅のすぐそばに、同市最古の医療技術企業であり、何年も前から医療技術企業グループB. Braunに属しているAesculapの本社があります。
ですが、同社の拠点はそこだけではありません。Aesculapは、世界中の計15拠点で製造活動を行っています。どの拠点も、グループ全体に製品を供給していますが、それぞれ重点領域が異なっています。例えば、トゥットリンゲンの3工場では手術器具、インプラント(従来の製法と積層造形)、滅菌コンテナとモーターシステムを製造している一方で、中国の蘇州工場ではピンセットに加えて、骨パンチをAesculapグループ全体向けに独占的に製造しています。
Aesculap(ドイツ・トゥットリンゲン)のマーク・ラウファー・エンジニアリング担当副社長は、トゥットリンゲンは「指令工場」として機能していると述べ、「大抵の場合は、ここが技術的なリーダーとなり、プロセスを改良し、国際的に展開しています」と説明しています。これは、新しい製造方法にも当てはまり、新製法が導入される場合は、本社工場で初期のテスト、品質保証と検証が行われた後に、他の工場にその装置が、付随する基準やパラメーターと共に提供されることになっています。
短パルスの代わりに超短パルスを採用
これは、現在進行中の新しいTruMicro Mark超短パルスレーザの導入にも当てはまります。同機は、世界中のAesculap工場でこれまで使用されてきた短パルスレーザすべてに徐々に取って代わることになっています。同機の超短パルスは、Aesculapにマーキングでも、その後に必要になるクリーニングでも、決定的なメリットをもたらします。具体的には、マイクロストラクチャリングを行うことで、マーキングの耐久性を高めて寿命を延ばすことが可能になります。
その理由は、エングレービングの場合とは異なり、酸化物層が発生して、洗浄・滅菌サイクルを頻繁に重ねるうちに徐々に薄れていくことがないためです。また、製造プロセス中に発生するスケールも少なくなります。従って、後で手作業で追加でクリーニングする必要もなくなります。Aesculap(ドイツ・トゥットリンゲン)のフェリックス・シュミット・システム & セキュリティおよび生産デジタル化部長は、こう述べています。「超短パルスレーザを導入したことで、作業効率がより一層高まっています。それに、一定のレーザパワーと品質も得られています。」
非常に有望なテクノロジーではありますが、これまで使用してきたレーザすべてを新しい装置と交換するのは、巨大なプロジェクトでもあります。このプロジェクトを、ラウファー副社長とシュミット部長はチームメンバーならびにユーザーと共同で実行に移しました。そして6か月間にわたって、TRUMPFのTruMicro Mark 2030を搭載したテスト装置で、実際の生産条件と練り上げた基準のもとでプロセスをテストしました。ラウファー副社長はこう述べています。「最大の課題は、各種要件の調和を図ることでした。当社は非常に幅広い製品ラインナップを取り扱っていますが、生産個数も大きく異なっています。この多種多様な生産体制が、世界中のどの工場で製造する場合でも、後でスムーズに機能することが求められているのです。」
開発プロセスには、多数のテストに加えて、ディッツィンゲンにあるTRUMPF Laser Application Center(LAC:レーザアプリケーションセンター)の訪問も含まれていました。「そこではTRUMPFのエキスパートと共に、様々なサンプルや材料を使用して試験を行うことができました」とシュミット部長は述べています。「それ以降、当社でも非常に豊富なノウハウを蓄積し、現在では新しい材料のテストを自社設備で自前で行うようになっています。ですが、限界に達した場合や、非常に特殊なアプリケーションの場合は、LACから常に有能なサポートを受けています。これは特に、新しいテクノロジーの導入時に非常に役立っています。」ラウファー副社長はそれにこう付け加えています。「パートナーシップに基づくこの協力体制は、両社にメリットをもたらしています。新しい装置では、すぐにすべてがスムーズに進行するわけではありません。当社からのフィードバックを受けて、解決策に共同で取り組むことで、TRUMPFは進歩していますし、それは当社の進歩にもつながっています。」
現場で得られる素早いサポート
TRUMPFからは、信頼性の高いテクノロジーだけでなく、同じように確かなサービスも得られることに、フェリックス・シュミット部長は魅力を感じています。「秀逸なサポートがとても利用しやすいことがTRUMPFの魅力です。世界中のどこでも、問題が発生した場合はいつでも素早い支援が受けられています。担当者は、当社の市場の特異性に精通しており、それに対応してくれています。」
同氏の同僚であるチャーリー・チュー部長にとっては、まさにその点が非常に重要になっています。チュー氏は、中国蘇州工場「China Instrument Plant」のレーザアプリケーション部長を務めています。そこでは、TruMicro Mark 2030を装備したTruMark Station 7000 1台と、TruMark 3000を装備したTruMark Station 5000 2台が稼働しています。「ここでは、毎年100万個以上の手術器具にマーキングを施していますが、一部の製品は小ロット生産となっており、ロット数が10から200個の間で切り替わっています。これは、信頼性が高いと同時に、素早い切り替えが可能な装置が必要であることを意味しています。」
信頼性の高いマシンが必要なのは言うまでもありませんが、チュー部長はその他に特に必要なポイントとして、次を挙げています。「頼もしいサービスです!ここは小規模の拠点なので、所有装置のうち1台が故障して停止してしまうと、生産能力の4分の1を失ってしまうことになりますから。」だからこそ同部長は、トゥットリンゲンのメンバーが何年も前から、そして新しい超短パルスレーザに関してもTRUMPFのテクノロジーを採用していることを喜ばしく思っています。 「ここ蘇州でのTRUMPFのサービスにかなうものはありません。問題が発生した場合は、電話とオンラインで素早くサポートが受けられるので、大抵の場合は、サービスエンジニアを派遣してもらう必要がなくなるほどです。スペアパーツは、3時間以内にタクシーで届きます。そのため、1日以内に問題を解決できるようになっています。」
世界中の全工場で新しいレーザテクノロジーに切り替えるような巨大プロジェクトであっても、TRUMPFなどのパートナーと協力することで、上手くいきやすくなります。フェリックス・シュミット部長はその理由を、こう説明しています。「TRUMPFと当社の企業理念は似ており、品質をあらゆる行動の中心に位置付けています。お客様の要件に対応する能力についても同様です。同じ目線に立って話し合い、お互いに批判もしながら、しかるべく行動しています。それが、このパートナーシップが上手くいっている理由です。」