国/地域/言語選択

スイスの医療技術企業が3Dレーザでプラスチックマーキングの精度を上げ、新基準を確立

「当社はスピーディー、フレキシブルかつ革新的で、スイス品質を提供しています」と、シュテファン・オクレ氏はSamaplast AGの企業理念を要約しています。オクレ氏は、スイスのザンクト・マルグレーテンに本社を置く同社のCEOです。ここザンクト・ガレン州で、Samaplast AGはプラスチック製医療製品とインプラントならびに医療機器をクリーンルーム条件下で製造しています。「最初の考案に始まり、プロトタイプの3Dプリント、そして製品の無菌包装に至るまで、当社はすべてのプロセスステップを自社でカバーしています。しかも当社はスピーディーでフレキシブルですが、それは垂直統合の度合いが高いからこそ可能になっているのです」と、勤務歴約30年のオクレCEOは説明しています。7年前、Samaplast AGは射出成形によるプロトタイプ製造を開始しました。「お客様にとって、本番で使用する材料を出来る限り早い段階で部品でテストできれば、有益であることが分かったのです。そこからは、ラピッドマニュファクチャリングのアイディアも生まれました」とオクレCEOは述べています。「その手法を利用して、当社では頭蓋プレートなどの患者別のインプラントをロット数1で、TÜV認証を取得した上で、クリーンルームで積層造形しています。」

Samaplast AG

www.samaplast.ch

Samaplast AGは、60年以上前から医療業界と技術産業向けに各種製品を製造しています。同社では、最初の考案から、医療製品とインプラントの無菌包装や技術コンポーネントの製造に至るまで、ユーザーをサポートしています。医療分野でのユーザーは、主にスイスとヨーロッパに点在しています。同社ではそのユーザー向けに、人工半月板・脊椎、ポート・心臓カテーテルや人工内耳部品などを製造しています。それらはすべて最高水準のクリーンルーム条件下でプラスチック射出成形され、無菌状態で最終包装されて出荷されています。それを実現するため、Samaplast AGでは高い垂直統合度合い、従業員95人の技術的な専門知識と高い投資率を重視しています。

業界
医療技術
従業員数
95
事業拠点
ザンクト・マルグレーテン(スイス)
TRUMPF製品
  • TruMark Station 5000(TruMark 6030装備)
  • TruTops Mark 3DとVisionLine
アプリケーション
  • プラスチック製医療製品とインプラントにクリーンルーム条件下で3Dマーキング

課題

垂直統合の度合いが高いことは、Samaplast AGに決定的な競争優位性をもたらしています。ですがそれは同時に、色が異なる極めて多種多様なプラスチックを処理しなければならないことも意味します。それには、PEEK、PPSU、TPEやPOMなどの熱可塑性樹脂だけでなく、高吸収性素材も含まれます。部品は非常に多岐にわたり、平らなものから複雑な3D形状に至るまで何でもあります。例えばPPSU製の股関節骨頭は体内には残らず、手術中に最終的なインプラントのサイズをテストするために使用されます。

Samaplast AGでは、特に少量生産を行っています。「通常は1個から数千個ですが、百万個単位の大量生産を行うこともあります」とオクレCEOは説明しています。生産の大部分はクリーンルームで行われています。医療技術分野での要件は高く、難度が高い領域ですが、オクレCEOによれば、「それでもエキサイティングなんです!」とのことです。 なお、Samaplast AGでは従業員95人の膨大な専門知識が頼れる力になっています。シュテファン・シェア氏もその一人です。仕上げ・ロジスティクス責任者である同氏は、医療製品とインプラントのレーザマーキングなどを担当しています。シェア氏とそのチームは、シリアル番号に加えて、マトリックスコードやUDIコードも施しています。そのために同社では、20年以上前からTRUMPFのベクトルマーキングレーザを使用しています。このレーザは信頼性が高いマシンですが、球形の製品にマーキングする際は、マーキングの歪みがどうしても発生してしまいます。

そのため、TRUMPFスイス支社のソフトウェアプロダクトマネージャー、クリストファー・ホイレが、2019年にオクレCEOとシェア氏に対して、開発パートナーとしてTruMark 6030とソフトウェアTruTops Mark 3Dをテストする話を持ちかけたところ、両者はすぐに快諾しました。共同で、三次元レーザマーキングに思い切って挑戦することになったのです。

TruTops Mark 3Dを使用して、困難な形状を有する部品に素早く簡単にマーキングすることができています。部品が球形であってもマーキングはきちんと施され、歪むことはありません。

シュテファン・シェア
Samaplast AG仕上げ・ロジスティクス責任者

ソリューション

その後まもなく、マーキングレーザTruMark 6030、マーキングソフトウェアTruTops Mark 3Dと画像処理システムVisionLineを装備したTruMark Station 5000が、ザンクト・マルグレーテン工場に搬入されました。そして、Samaplastチームによって徹底的に検証されることになりました。オクレCEOはこう振り返っています。「時間に追われることなく、この装置を社内に設置して、生産現場に左右されることなく試験するだけでなく、技術的な部品を製造することもできました。こうして、このシステムの改良に携わることができたのは、当社にとって大きなチャンスでした。」

同CEOがこのレーザソリューションに期待していたことは明快で、最大限の読み取りやすいさと耐摩耗性が鍵になっていました。どちらも、Samaplast AGのユーザーにとって最優先事項であるためです。また、オートクレーブと呼ばれる機器内で行われる高圧蒸気滅菌を繰り返しても、マーキングに傷が付がないことも求められていました。この課題に対して、TruMark 6030は完璧なソリューションであると言っても過言ではないでしょう。その理由は、このシステムには決定的な利点があるからです。3D機能を備えたこのシステムでは、形状が複雑な加工品にも、外観の歪みなしでマーキングを施すことが可能なのです。

Samaplast AGのようなお客様との開発パートナーシップは、TRUMPFのソフトウェア開発担当者にとっても重要です。「当社のソフトウェアを医療技術分野のニーズに合わせて最適に調整するには、実用例に直に触れる必要があります。多種多様な複雑な部品を取り扱い、高水準の操作性と効率を求めているSamaplast AGは、こちらを鍛えてくれる理想的なパートナーです。直接得られたフィードバックは、当社ソフトウェアの改良プロセスに即座に取り込まれており、この協力体制は非常に貴重であることが明らかになっています。」

 

実行

「TruMark 6030のおかげで、品質面で大きく飛躍することができました」とシュテファン・シェア氏は述べています。「とりわけ、股関節骨頭などの困難な形状を有するインプラントに、素早く簡単にマーキングを施すことができています。加工品のSTEPファイルをマーキングソフトウェアTruTops Mark 3Dに読み込んで、マーキングを配置するだけで、マーキングを開始する準備が整ったことになります。」

大抵の場合は、更に治具が必要になり、加工品、治具とレーザの位置を再測定しなければなりませんが、VisionLineのおかげで、この工程はインプラント用プラスチックポジショニングエイドであっても不要になっています。 「完全に治具なしで部品にマーキングしています。これは当社に非常に大きいメリットをもたらしています」とシェア氏は強調しています。「部品をワークテーブルに載せて、少し操作しただけで、マーキングプロセスを開始することができます。これは時間とコストの膨大な削減につながっています」とシェア氏は説明しています。

また、TruTops Mark 3Dのパラメーターライブラリからも大きなメリットがもたらされています。「例えばPEEK製部品を何度も取り扱う場合は、ライブラリにアクセスして、適切なパラメーターを読み込むことができます。そうすることで予めベースが得られるため、最適なプロセスに到達するまでの時間が短縮されます。 これは、多種多様な材料を取り扱う際に役立っています」とシェア氏は述べています。

上記に加えて、レーザパワーの向上もプロセスのスピードアップに貢献しており、その結果として生産時間が短くなっています。 「部品によっては、以前より3~4倍速くなっています」とシェア氏は強調しています。現在Samaplast AGでは、手術用ドリルのグリップに30秒でマーキングを施していますが、以前はこれに1分以上を要していました。

展望

これを受けて、オクレCEO、シェア氏とホイレは同様に喜んでいます。そして、開発パートナーシップはあらゆる面で有益であったと総括しています。「Samaplast AGと協力したことで、TRUMPFは非常に多くの知見を得ることができました」とTRUMPFのクリストファー・ホイレは述べています。「同社は焦点をイノベーションに明確に当てていて、既存の枠にとらわれない方法で物事を考えるようにしています。そしてもちろんそれをパートナーにも、すなわち当社にも求めています。難度の高いマーキングアプリケーションやソフトウェアに対する高い要件で、厳しく鍛えてもらいました。貴重なインプットを頂けたおかげで、ソフトウェアを改良することができました。」シュテファン・オクレCEOにとっても、メリットは明らかです。「20年前から、TRUMPFとの密接な協力から恩恵を受けています。このパートナーシップを通して、開発担当者と直接つながりを持てたことで、実際の現場からの重要な情報を伝えることができました。これは全員にとってメリットになっています。」

同CEOは、今後もこの協力体制を継続していく考えを示しており、既に新しい構想を立てています。そして、将来的にはどの部品も完全に治具なしでマーキングするビジョンを描いています。これまでのところSamaplastでは、治具をポカヨケの原則に従って自社製造しています。非常に精密でなければならないため、この製造にはコストと時間がかかっています。装置に部品を装着する工程も、まず加工品ひとつひとつを治具に固定しなければならないため、時間がかかっています。

「部品をワークテーブルに載せるだけで、後はAIが非常に複雑な3D形状であっても簡単に検出して、3Dファイルと比較して、マーキングとパラメーターを指定して、マーキングプロセスが自動的に開始するようになる。これが将来の夢です」とオクレCEOは述べています。これは、次の開発パートナーシップの着眼点になるかもしれませんが、そのパートナーがTRUMPFになることは間違いありません。

マーキングレーザTruMark 6030
TruMark 6030

3D機能を備えたこのマーキングレーザは、ユーザーに新次元の可能性をもたらします。高出力と卓越したビーム品質が得られるTruMark 6030では、医療技術業界でのエングレービング、削剥、マーキングやアニーリングに対する高い要件を満たすことができます。

Keyvisual TruTops Mark 3D
TruTops Mark 3D

操作しやすく、プロセス時間の短縮に貢献するマーキングソフトウェアTruTops Mark 3Dを使用すれば、三次元マーキングが素早く簡単に実現します。新しいラップアルゴリズムが採用されているため、歪んだ面や自由形状物体でも歪みのないマーキングが可能になります。マーキング内容は、ドラッグ & ドロップで部品の3Dモデル上に直接配置することができます。

TruMark 6030 mit VisionLine
VisionLine

VisionLineは不良品の防止に役立ちます。このカメラベースの画像処理システムは、部品の位置を自動的に検出し、その情報をコントローラーに転送します。画像データはいつでも保存可能であるため、部品のトレーサビリティが確保されます。

2024年3月26日現在