国/地域/言語選択

ケビンとマルセル・ケンプフ氏は、課題に立ち向かうことを恐れていません。2018年にレーザ溶接の自動化に踏み切ることを決断した際、両氏は機械稼働率、投資コスト、必要な治具製造のことを問題としてしっかりと意識していました。ですが、それよりも自動生産に向けて生産現場を進化させるチャンスの方が重要であると考え、企業家として勇気をもって行動したことが、報われることになりました。士気を高めるスマートなアイデアで、まずは従業員をこの新しいテクノロジーのファンにした後で、顧客にもその魅力を理解してもらうことに成功しました。精緻でありながら高強度の溶接ビード、再現性の高い品質、短い納期、リーズナブルな価格というメリットを目にすることで、大いに疑っていた人たちもその素晴らしさに納得するに至ったのです。

Kempf GmbH

www.kempfgroup.de

ドイツのクライヒタール=ゴッホスハイムに本社を置くKempf GmbHは、2代目が経営の舵を取っている家族経営企業です。板金・パイプ技術分野の受託製造業者である同社は、機械・設備製造業界、治具製造業界、医療・リハビリ技術業界、自動車業界やエレクトロニクス業界の企業などに製品を納めています。2020年、ケビンとマルセル兄弟が、1997年に父親のアンドレアス・ケンプフ氏が設立した会社を引き継ぎ、それ以降継続的に成長させています。約70人の従業員を抱える同社は、部品設計から表面処理に至るまで、板金のプロセスチェーン全体をカバーしています。Kempfの売りは、品質に対する高い要求水準と短い納期ですが、単純なコスト計算だけを指針にするのではなく、士気の高い従業員と自分たちの勘も信じて経営しているケンプフ兄弟の勇気も同社の強みになっています。 一緒になって熱心に取り組み、新しいことに情熱をもって接する姿勢が、Kempfチームの団結力を高めています。

業界
板金・パイプ技術
従業員数
70
事業拠点
クライヒタール=ゴッホスハイム(ドイツ)
TRUMPF製品
  • TruLaser Weld 5000
  • TruLaser 5030 fiber
  • TruLaser Tube 5000
  • TruMatic 6000
  • TruArc Weld 1000
  • TruBend 5000シリーズの各種マシン
  • TruBend Cell 5230 S
  • TruBend 7036
アプリケーション
  • 2Dレーザ切断
  • パンチ・レーザ複合加工機
  • 3Dレーザパイプ切断
  • 自動曲げ加工
  • 自動レーザ溶接

課題

納期とコストに対するプレッシャーの高まり、専門人材不足、そして当然のことながら激しい競争を受けて、どの企業も未来に向けた確かな解決策を見つける必要性に迫られています。そのうちのひとつがオートメーションです。そのため、ケビンとマルセル・ケンプフ兄弟は、もう何年も前から自動レーザ溶接に目を付けていました。ですが、実際に導入に踏み切ったのは、TRUMPFがレーザ溶接セルTruLaser Weld 5000とオプションのFusionLineを発売してからのことでした。「それまで、レーザ溶接では部品精度に対する非常に高い要件が前提条件となっていましたが、TRUMPFがFusionLineを開発したことで、この要件が下がったのです。これが当社の関心を引きました」とケビン・ケンプフ氏が説明している隣で、マルセル・ケンプフ氏は当時のことをこう思い起こしています。「2018年、当社は現在と同じような問題を抱えていました。受注状況は良くても、優秀な人材を見つけるのが困難だったのです。特に溶接工は、今でも当時でもほとんどいない人材です。オートメーションソリューションを導入して、人材不足に左右されないようにしようと考えたのです。」それに加えて、ケンプフ兄弟はテクノロジー自体にも魅力を感じていました。「最初は、即座にレーザ溶接に適している部品はごくわずかしかありませんでしたが、大局を見ることにしたのです。レーザ溶接のような最新のテクノロジーを搭載したマシンがなければ、顧客を獲得することもできませんから」と、ケビン・ケンプフ氏は実践的な視点で説明しています。

"レーザ溶接ビードを一度見たお客様は、それ以外はもう希望しなくなっています。"

マルセル・ケンプフ(左)
Kempf GmbH取締役

解決策

かつては、レーザ溶接では部品精度に対する非常に高い要件が前提条件となっていましたが、2016年にTRUMPFがTruLaser Weld 5000とFusionLine機能を発売したことで、この要件が下がりました。FusionLineがあれば、例えば上流の工程で行われた曲げ加工などによって発生した部品のずれを補整することができます。そのため、レーザ溶接用に改良されていない部品でも接合することが可能です。隙間の幅が1ミリメートル以下であれば、FusionLineはそのギャップを問題なく埋めることができます。熱伝導溶接や深溶け込み溶接などの従来型のレーザ溶接とFusionLine間の切り替えは、設備の装備変更なしで実現します。「部品の準備に対する高い要件が、自動レーザ溶接の導入を長い間ためらった主な理由でした」と、ケビン・ケンプフ氏は当時を振り返っています。「TRUMPFがFusionLineを開発したことで、このハードルが取り除かれました。」

また、以前は手間をかけて切削加工し、伝熱用の銅プレートを装備した治具が自動レーザ溶接工法に必要でしたが、これもケンプフ兄弟に二の足を踏ませる要因になっていました。「お客様に、部品用の治具だけでも数千ユーロかかると言ったら、その時点で拒否されてしまいます」とケビン・ケンプフ氏は述べています。ですが、ここでも時代は代わりました。今日では、板金製のモジュール式治具と再使用可能な標準クランピングシステムで完全に十分になっています。「板金製治具は自分たちでも簡単に作れると確信していました」とマルセル・ケンプフ氏が回顧している隣で、ケビン・ケンプフ氏は笑みを浮かべながら、「実際、最初はそう簡単ではなかったのですが、何とかやり遂げました」と付け加えています。

Kempfでは、TruLaser Weld 5000に装備されている回転テーブル上で、大量の部品を直接作業時間と並行しながら高速で溶接しています。「このマシンは非常に高速なので、準備にかかっている時間の方が、この設備での溶接プロセス自体の所要時間よりもはるかに長くなっています」とケビン・ケンプフ氏は述べています。Kempfでは、部品を両側から加工することを可能にする2軸ポジショナーを、比較的複雑な部品の溶接に使用しています。「一部のコンポーネントでは、TIG溶接と必要な後処理に1時間以上かかっていました。それがレーザでは、10分で済むようになっています。TruLaser Weld 5000を導入したことで、通常であれば丸々1週間かかる作業を1シフトで処理できるようになっています」と、ケビン・ケンプフ氏は興奮しながら総括しています。

 

実行

Kempf兄弟は、機械稼働率に関する問題をスマートなアイデアで解決しました。「当社の従業員は、部品を自動レーザ溶接用に設計し直し、その工法に必要な治具を製造することに、最初はあまり乗り気ではありませんした。そこで、レーザ溶接用に改良した部品それぞれにつき、成功ボーナスを出すことを思いついたのです。加工プログラム、部品に合う治具、そして新しいプロセスに関して改良前と改良後の状況が記載された資料を要求することにしました。そしてもちろん、お客様のゴーサインも必須条件としました」とケビン・ケンプフ氏は語っています。「これを達成した従業員に、ボーナスを出すことにしたのです。」物事は計算通りに進み、従業員が短期間のうちにレーザ溶接に適した部品を多数特定し、プログラミングを練り上げ、治具を開発して製造するに至りました。

現在では、このテクノロジーのファンになっている顧客の数も右肩上がりに増えています。「一度自分の部品をこの工法用に再設計させて、レーザ溶接ビードを見たお客様は、それ以外はもう希望しなくなっています。この工法は、MIG・MAG・TIG溶接と比較して、特に手溶接の場合と比べて、品質の面で飛躍的に優れていることを理解して頂けるようになっています」とマルセル・ケンプフ氏は述べています。なおそこでは、TruLaser Weld 5000がオーダーを時間通りに迅速に処理していることが決定的な意味を持っています。また、同機では再現性100パーセントの溶接結果が常に得られています。「この信頼性をお客様は高く評価しています」とマルセル・ケンプフ氏は自覚しています。

展望

「TRUMPFからは最適なコンサルティングを受けましたし、溶接部門のロビン・シュトゥーラーさんと販売部門のドミニク・シューマッハーさんは今日に至るまで、必要な時にいつでも当社をサポートしてくれています」とケビン・ケンプフ氏は説明し、いたずらっぽく笑いながら次のように付け加えています。「シュトゥーラーからはレーザ溶接について非常に良い手ほどきを受けたので、今ではシュトゥーラーさんが感銘を受けて写真を撮るほどの治具を製造できるようになっています。」

称賛の声は、TRUMPF Bankの従業員にも向けられています。「導入初期は機械稼働率が低いことを問題として取り上げた際、最初の2年間は賦払金を下げることをすぐに提案してくれました。すべてが上手くいくようになったら、賦払金を上げることにする、と言ってくれたのです。このおかげで、投資決定が更に簡単になりました。」

現在Kempfでは、生産面積を目下の2,500平方メートルから4,000平方メートルに拡大しています。新工場は2025年に稼働を開始することになっています。ケンプフ兄弟は、既に現時点でTRUMPFの自動曲げセルに投資しており、生産現場にオートメーションモジュールがもうひとつ加わったことになっています。「いつになるかは分かりませんが、ひょっとしたら、新しいレーザ溶接セルも導入されるかもしれませんよ」とケビン・ケンプフ氏はほくそ笑みながら語っています。

製品に関する詳細情報

TruLaser Weld 5000
TruLaser Weld 5000

ロボット、レーザ、加工光学系、セーフティキャビンと位置決めユニットを備えたTruLaser Weld 5000は、自動レーザ溶接向けのターンキーシステムです。一つのシステムで、深くて強度の高い継目や、きれいに角が取れた滑らかな継目を溶接することができます。FusionLineを利用すれば、部品に隙間がある場合でも、その幅が1ミリメートル以下であれば溶接可能です。また、高周波発振とモジュール式フォーカス調整を組み合わせたBrightLine Scan機能では、溶接プロセスでの堅牢性と安定性が高まり、非常に均質な溶接ビードが実現可能になります。アルミニウムの溶接でBrightLine Scanを利用すれば、品質が大きく向上します。

製品へ

2024年10月16日現在