解決策
かつては、レーザ溶接では部品精度に対する非常に高い要件が前提条件となっていましたが、2016年にTRUMPFがTruLaser Weld 5000とFusionLine機能を発売したことで、この要件が下がりました。FusionLineがあれば、例えば上流の工程で行われた曲げ加工などによって発生した部品のずれを補整することができます。そのため、レーザ溶接用に改良されていない部品でも接合することが可能です。隙間の幅が1ミリメートル以下であれば、FusionLineはそのギャップを問題なく埋めることができます。熱伝導溶接や深溶け込み溶接などの従来型のレーザ溶接とFusionLine間の切り替えは、設備の装備変更なしで実現します。「部品の準備に対する高い要件が、自動レーザ溶接の導入を長い間ためらった主な理由でした」と、ケビン・ケンプフ氏は当時を振り返っています。「TRUMPFがFusionLineを開発したことで、このハードルが取り除かれました。」
また、以前は手間をかけて切削加工し、伝熱用の銅プレートを装備した治具が自動レーザ溶接工法に必要でしたが、これもケンプフ兄弟に二の足を踏ませる要因になっていました。「お客様に、部品用の治具だけでも数千ユーロかかると言ったら、その時点で拒否されてしまいます」とケビン・ケンプフ氏は述べています。ですが、ここでも時代は代わりました。今日では、板金製のモジュール式治具と再使用可能な標準クランピングシステムで完全に十分になっています。「板金製治具は自分たちでも簡単に作れると確信していました」とマルセル・ケンプフ氏が回顧している隣で、ケビン・ケンプフ氏は笑みを浮かべながら、「実際、最初はそう簡単ではなかったのですが、何とかやり遂げました」と付け加えています。
Kempfでは、TruLaser Weld 5000に装備されている回転テーブル上で、大量の部品を直接作業時間と並行しながら高速で溶接しています。「このマシンは非常に高速なので、準備にかかっている時間の方が、この設備での溶接プロセス自体の所要時間よりもはるかに長くなっています」とケビン・ケンプフ氏は述べています。Kempfでは、部品を両側から加工することを可能にする2軸ポジショナーを、比較的複雑な部品の溶接に使用しています。「一部のコンポーネントでは、TIG溶接と必要な後処理に1時間以上かかっていました。それがレーザでは、10分で済むようになっています。TruLaser Weld 5000を導入したことで、通常であれば丸々1週間かかる作業を1シフトで処理できるようになっています」と、ケビン・ケンプフ氏は興奮しながら総括しています。
実行
Kempf兄弟は、機械稼働率に関する問題をスマートなアイデアで解決しました。「当社の従業員は、部品を自動レーザ溶接用に設計し直し、その工法に必要な治具を製造することに、最初はあまり乗り気ではありませんした。そこで、レーザ溶接用に改良した部品それぞれにつき、成功ボーナスを出すことを思いついたのです。加工プログラム、部品に合う治具、そして新しいプロセスに関して改良前と改良後の状況が記載された資料を要求することにしました。そしてもちろん、お客様のゴーサインも必須条件としました」とケビン・ケンプフ氏は語っています。「これを達成した従業員に、ボーナスを出すことにしたのです。」物事は計算通りに進み、従業員が短期間のうちにレーザ溶接に適した部品を多数特定し、プログラミングを練り上げ、治具を開発して製造するに至りました。
現在では、このテクノロジーのファンになっている顧客の数も右肩上がりに増えています。「一度自分の部品をこの工法用に再設計させて、レーザ溶接ビードを見たお客様は、それ以外はもう希望しなくなっています。この工法は、MIG・MAG・TIG溶接と比較して、特に手溶接の場合と比べて、品質の面で飛躍的に優れていることを理解して頂けるようになっています」とマルセル・ケンプフ氏は述べています。なおそこでは、TruLaser Weld 5000がオーダーを時間通りに迅速に処理していることが決定的な意味を持っています。また、同機では再現性100パーセントの溶接結果が常に得られています。「この信頼性をお客様は高く評価しています」とマルセル・ケンプフ氏は自覚しています。