
手首から空気の質を。世界最小の細塵検知器
ここの空気は清浄ですか?スマートウォッチが近い将来、この質問に答えてくれるようになるかもしれません。というのも、Bosch SensortecとTRUMPFが、ミニレーザが周囲の空気をスキャンして粒子を調べるという、危険な細塵を測定するまったく新しい方法を研究しているからです。この新しいセンサーは、光学的に動作するので、ガラスを隔てて設置でき、音もせず、メンテナンスの必要もないという特徴があります。この新しいテクノロジーにより、従来のセンサータイプの450分の1という超コンパクト設計が可能になりました。そのため、スマートウォッチ ディスプレイの裏側などのように、あらゆるものに目立たない形で組み込むことができます。
課題
空気中に含まれる細塵を吸い込むと、粒子が肺から直接血液に入り込んでしまい、健康を損なうおそれがあります。入り込んでしまった粒子は呼吸を吐いて外に出ることなく、身体の中に残るからです。自治体はこれまで、街中の細塵の濃度を所定の地点で測定して、その都市全体の平均値を公表していました。しかしこの方法だと、人がリアルタイムで呼吸している空気のことをほとんど説明していません。特に、屋外よりも屋内の方が、キッチンでの調理や暖炉の火、ロウソクによる細塵汚染が酷いからです。Bosch SensortecとTRUMPF Photonic Componentsは、誰でも自身の周囲の空気を素早く安全に測定し、細塵の汚染がある場合に自身の身を守れる方法を模索しています。
ソリューション
開発パートナー二社が選んだのは光学式のアプローチ、つまりVCSEL。VCSEL (Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser。垂直共振器型面発光レーザの意) は、ミクロンサイズの超小型ダイオードです。高ビーム品質のレーザ光を放射し、フォトダイオードによる反射光を集め、その評価が可能です。空間に分布した小型レーザが周囲の空気に含まれる粒子をスキャンして、反射光の干渉をフォトダイオードが測定し、システムが感知した空気中の粒子のサイズと量を計測します。この測定手順をSMI (Selbst-mischende Interferenz。自己混合干渉の意)と呼びます。測定は光学的に行われることから、空気と直接に接触しなくてもよく、VCSELは小さなスクリーンにより保護されています。測定するために空気を吸引するファンも必要がないため、センサーはまったく動作音がしません。さらに、清掃やメンテナンスも必要ありません。この新たな測定アプローチにより、センサーの体積は数ミリに縮小可能です。よって、これまでの細塵センサーの450分の1の大きさと非常にコンパクトになります。Bosch Sensortecのペーター オスタターグ氏は、「マッチ箱、いいえ、マッチ棒の頭部分ほども要りません。」と喜んでいます。これにより、たとえば炒め物で細塵が多く出るような場合には、レンジフードが自動で出力を調整できます。あるいは、家屋で細塵センサーによりアラームが鳴ると換気装置が作動するというようなことも可能です。
実行
細塵センサーの開発提携が始まったのは2015年。Bosch SensortecとTRUMPFにとっては、今回が初めての共同プロジェクトではありませんでした。これについて、ペーター オスタターグ氏は、「TRUMPFとの共同開発は真のパートナーシップといえるものです。目標に向かってお互いに尊重し合っています。TRUMPFでは皆さんがオープンに物事を考え、迅速に対応している点を特に評価しています。」と語っています。
展望
省エネかつ小型の光学式粒子センサーは、目立たずどこでも組み込めるのが特徴です。まったく異なる、各種用途にも関心を向けており、Bosch SensortecとTRUMPFは現在、この新たなセンサー原理を生かせる別の構想も検討を行っています。