焼き戻し:レーザによる金属の高耐久性マーキング
焼き戻しは、スチールといった金属の高耐久性マーキングで定着している手法ですが、 その理由は、これらの材料ではレーザによる加熱時に焼き戻し色が生まれるためです。この色は金属の加熱温度に大きく左右され、 焼き戻しの際に表面に発生する酸化物層の特性によって、特定の色合いが生み出されます。
焼き戻しでの主な利点は、表面に傷がまったく付かないこと、マーキングが読み取りやすいこと、そして耐久性と耐摩耗性に優れていることにあります。焼き戻しは、はめ合わせ部分を維持するか、材料の膨隆を防止する必要がある場合に理想的な手法です。したがって、調理器具などの消費財や医療製品に特に適しています。
金属のレーザマーキング手法、焼き戻しの仕組み
焼き戻しでは、レーザが金属を局所的に融点近くまで加熱します。すると格子の構造が変化し、加工品の表面に酸化物層が形成され、その結果として様々な焼き戻し色が生まれます。この色は約200 °Cの温度まで安定しています。温度がそれ以上になると格子は再び初期状態に戻り、マーキングが消えます。表面特性が損なわれることはまったくありません。
原則、焼き戻しは、熱と酸素の影響を受けると色が変化する金属でのみ可能です。したがって、スチールとチタンでは可能ですが、アルミニウムや非鉄重金属では不可能です。硬質合金も、焼き戻しで濃いコントラストを生み出すことはできません。
レーザによる焼き戻しにはどのような利点があるでしょうか。
マーキングプロセスが材料表面に影響を及ぼすことがほとんどありません。マーキングを施した後でも滑らかな表面が維持されます。
表面が滑らかであるため、有機残留物が焼き戻しに付着することがほとんどありません。したがって、頻繁に洗浄される物品に最適です。
適切なパラメータを選択することにより、たとえば多岐にわたる医療製品で洗浄を何度繰り返したとしても、焼き戻しは消えることなく十分に読み取ることができます。
ここ数年の間に医療技術業界に定着した焼き戻しは、超短パルスレーザによる新工法のブラックマーキングと並んで、明確なトレーサビリティを実現するための製品記号のマーキングにうってつけです。UDIガイドラインにも適合します。
焼き戻しの用例
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